玄関のチャイムが鳴った。夫が仕事から帰ってきたようだ。

 私は、離乳食の空瓶を新聞紙にくるんでゴミ箱の奥へと捨てると

「はーい」
 玄関へと向かった。





 ドアを開けると、また、家のとは違うあのシャンプーの匂いがした。

「ねぇ、まだ浮気してるの?」
 夫はビクリと肩を震わせる。そして、家から閉め出されないようにドアとその隙間に足を差し込んだ。



「リビングに来て。話をしましょう」