――五か月後。息子が離乳食を食べるようになって、乳房の痛みから解放された。そして少しずつ余裕が出てくるようになった。

 しかし、私には一つだけ不満があった。それは、

「離乳食は、ちゃんと作ってね。売ってるものは、添加物とか入ってるから」
 夫のこの言葉である。




 義理母は夫を含めて三人の子供をすべて、手作りの離乳食で育て上げたのだという。時代が違うだろと文句を言いたくなったが、産後の体で赤ちゃんの息子を抱えて家から追い出されたくはないので、私は旦那に大人しく従うことにした。




「はーい、ユウタ。ご飯ですよー」
 豆腐の味噌汁をすりつぶして粗熱を取ったものを、スプーンに乗せて息子の口元へと運ぶ。

「あああああ―――!!」
 奇声を上げて、はたき落とされる。スプーンはしばし宙を舞って、それからべちゃりとカーペットに落ちた。

「うああああ、ああああ!!!!」
「ああ……もう」

 息子は、かなりの偏食だ。食事のときは毎回難儀している。しかたない。今は夫が仕事で家にいないし、秘密兵器を出すか。




「はーい。おいしいレトルトだよ」
 市販の瓶に入った離乳食をスプーンに乗せ、息子の口元へと運ぶ。あ、食べた。

 彼は、この瓶に入った『チーズリゾット味の離乳食』しか食べないのだ。母としては、栄養が偏るからいろんなものを食べてほしいんだけれど……。