私は家を出て、当てもなく夜の街をふらふらと歩いた。夫の豹変した顔が脳裏にこびりついて、怖くてたまらない。

「おねーさん、なんか嫌なことあった？　おすすめのホストクラブあるよー？　悩み聞いてってもらわなーい？」

　キャッチを避けながら歩くと、いつの間にか結婚前に務めていた会社の前に来てしまった。





「働く……か」

　独身のときはあれだけ働くのが嫌だったのに、今では出産と天秤にかけている。働きたくない気持ちも、あの頃よりはずっと小さくなってしまったけれど、胸の中に灯くらいは、まだある。

　子供を産むか、それとも働くか。全く恋愛的に好きではない夫の子。それに、マザコン。不安しかないけれど、根は大人しくて優しい人だ。子供が生まれれば変わってくれるだろうか……？





　私の子供のときの夢は、素敵なお嫁さんだった。ウエディングドレスを着て、カッコよくて優しい夫と結婚して、可愛い赤ちゃんを産んで、幸せな家庭を作りたい。

　今、その夢のレールに乗っているはずなのに、こんなにも不安なのはなぜなのだろう……？