やっと義理母が帰り、リビングでほっと一息ついていると夫がやって来た。

「ねぇ、子供作らないの?」
 私は彼から目をそらしながら、愛想笑いでごまかした。

「お母さんも、孫の顔が見たいって言ってたよ」
「またお義母さん!? アンタほんっとに、お義母さんが好きだね。このマザーファッカー野郎が! そんなにお義母さんがいいなら、お義母さんと結婚しろよ!!」

 夫は、いきなり怒り出した私に吃驚して硬直する。子供を作ること自体が嫌だったわけじゃない。もちろん、もう少し子なし専業を楽しんでからという思いはあったが。

 だが、夫の、母親に子供を作れと言われたので産んでくれという発言は許せなかった。十月十日、腹の中を下から押しつぶされて日常生活に支障をきたしながら妊娠し、内臓を引きずり出される痛みを味わって産むのは私だ。なのに、母親が欲しがっているから産めだなんて。ペットが欲しいんじゃないんだから。

 結婚前から夫がマザコン気質なのは知っていたが、それでも今回はさすがに常軌を逸していると思う。だから、思わず私もカッとなってしまったが、それ以外は本当に良い人なのだ。

 だから、私の今の言葉に傷ついてしまったのなら、謝らないと。

「あの、」
「じゃあ、出てけよ」
「……え?」