私は帰りの電車の中で、彼女の言葉を何度も反芻する。もしかして、私は素晴らしい男性と結婚できたのではないか……?

 見た目が好きじゃないとか、恋愛感情を抱けないとか、今まで不満に思っていたことが間違いだったのではないか? 私は、もっと夫に感謝するべきなのでは……?

 夫は、私が生活に不自由しないようにお金を稼いできてくれる。家事についても、うるさくは言わない。だから、私は幸せなのではないのだろうか。






 家に帰ると、夫はリビングで一人、昨日私が買って冷蔵庫に入れておいたお総菜を食べていた。

「ただいま」
 と返すと、

「おかえり」
 と、飯を頬張りながら返してくれる。

「私ね、今自分が幸せなんじゃないかって、感じてるの」
 変な日本語になってしまったけれど、今の自分の感情に一番近い言葉はこれだ。旦那は、なんだコイツいきなり。みたいな顔をして

「あそう」
 とだけ言って、食事に戻る。


「それだけじゃ足りないでしょ。なんか一品作る」
 私は台所に行くと、エプロンを身に纏った。