あれから何度か実験を行ったことで、前回の推測を補強することができました。
 判明したことを以下に列挙します。

 「読むと死ぬ話」は一文でも読んだ時点で死ぬ。
 読んだ量が全体の半分未満だと、死因がランダムに決定する。
 読んだ量が半分を超えると、共通の死因になる。
 読み進めるほど死ぬ時期が早まる。

 基本は前回の戦記物の「翻訳版」を使いました。
 たまに佐野君も読んだ悲恋の物語を導入したところ、上記の特性に変わりはなかったです。
 生まれた場所も時代も言語も異なる「読むと死ぬ話」ですが、呪いの法則は共通しているようです。
 非常に興味深い現象ですが、深掘りすると話が脱線するので一旦置いておきます。

 今回のメインテーマは「死因と物語の因果関係」です。
 「読むと死ぬ話」を半分以上読むと、特定の死因を招きます。
 戦記物は焼死で、悲恋の物語は転落死です。
 大野さんの「要約メモ」によると、どちらも作中の主人公が辿る末路でした。
 このことから、呪われた被害者は物語に沿った死因に至ると考えられます。
 読者に物語を追体験させる、という表現でもいいかもしれませんね。

 私は他の「翻訳版」も使用し、それぞれがどんな死因に至るか調べることにしました。
 「要約メモ」を読めばだいたい予想できますが、やはり実際に検証しなければなりません。

 そこで私は、アルバイト募集で無作為に選んだ人々に「翻訳版」の全文を読ませました。
 一人につき一つの物語を担当させて完読するよに指示します。
 実験は特に問題もなく予定通りに終わりました。
 それから待つこと二週間。
 全員の死が確認できたので結果を発表します。

 すべての被験者が「読むと死ぬ話」の結末に類似した死を辿っていました。
 凍死、感電死、出血死、病死、孤独死……。
 さすがにこれだけ綺麗に結果が出ると疑う余地もありません。
 「読むと死ぬ話」は、内容に沿った死を招くようです。