満たされた家

俺の名前は田中。都内のIT企業に勤めている。

これから皆さんに見せるのは、俺の同僚だった健太の家庭用クラウドサーバーから、俺が抜き出した記録の全てだ。


健太とは同期で、一番の友人だった。仕事ができて、明るくて、いつも周りを笑わせる良い奴だった。奥さんの唯さんとも何度か会ったが、本当に幸せそうで、お似合いの二人だった。


一ヶ月前、健太は会社を無断欠勤した。

電話もLINEも繋がらない。警察が彼のアパートを訪ねたが、部屋はもぬけの殻。夫婦と、生まれたばかりの赤ちゃんの三人、忽然と姿を消したんだ。


警察の捜査が行き詰まる中、俺は一つの可能性に思い至った。健太が失踪する数日前、ひどく怯えた声で俺にこう言ったんだ。
「もし俺に何かあったら、このアカウントを見てくれ。全部、記録してあるから」と。


これは、そのアカウントから俺が復元し、時系列順に並べたログだ。