住宅ローン破綻で一家心中相次ぐ　専門家「過度な執着が悲劇生む」

　全国で住宅ローン破綻を背景とした家族の心中事件が急増していることが、警察庁の調査で明らかになった。今年上半期だけで前年同期比3割増の21件が発生し、うち15件が新興住宅地の戸建て住宅居住者だった。

　事件の特徴として、経済的困窮から 社会的孤立が進み、最終的に家族全員が現実から目をそらした状態で心中に至るケースが多いという。

　心理学の専門家である東名大学の鬼塚教授は「マイホーム購入への過度な執着が判断力を鈍らせ、現実認識を損なわせる場合がある」と分析。「『家族のため』という大義名分により、冷静な状況判断ができなくなる傾向が見られる」と警鐘を鳴らす。

　特に問題となっているのが、段階的な社会からの離脱だ。経済的困窮により外出を控えるようになり、やがて近隣住民との交流も断絶。最終的に家族単位で完全に孤立してしまう。

　県内では今年に入ってから3家族が行方不明となっており、関連が疑われている。いずれも新興住宅地の住民で、住宅ローンを抱えていたという共通点がある。

　県警の担当者は「発見時には家族全員が家の中にいるケースが多く、外部からの発見が困難。近隣住民からの通報により発覚することがほとんど」と説明する。

　厚生労働省では住宅ローン問題に関する相談窓口の拡充と、地域の見守り体制強化を進める方針だ。

「経済的困窮は一時的な問題だが、孤立による現実認識の変容は回復困難な場合が多い」と鬼塚教授。「早期の相談と支援介入が重要」としている。