マイホーム日記

◇2024年5月15日

 最近、外の世界との距離感が変わってきた気がする。

 会社では相変わらず居心地の悪さを感じている。昨日も上司から、吉本君、最近ミスが多い、何か気になることがあるのかと注意された。確かに集中力が続かない。頭の中は常に家のことでいっぱいだ。

 住宅ローンの返済、光熱費、食費、子供たちの教育費。数字が頭の中でぐるぐると回り続けている。同僚たちの何気ない会話も、どこか上っ面だけのように感じられてしまう。

 しかし、家に帰ると全てが違う。玄関を入った瞬間に感じる安堵感は、何物にも代えがたい。家族の笑顔、温かい夕食、穏やかな時間。これこそが本当の幸せなのだ。

 佐恵子は、あなたが疲れて帰ってくるのを見ているのが辛い、でも家族が一緒にいれば何でも乗り越えられる、と言って私を励ましてくれる。その通りだ。家族の絆があれば、外の世界の困難など些細な問題に過ぎない。

 翔太は今日、僕たちの秘密の部屋がもっと増えたと報告してくれた。全部で六つになり、一番新しいのは階段の途中にある小さな窓のところなのだという。

 階段の踊り場にある小さな窓際のスペースも、翔太には立派な部屋に見えるらしい。子供の感性は素晴らしい。限られた空間を最大限に活用する発想力に感心する。

 綾香も、お人形さんのお部屋がたくさんできて、みんな仲良く住んでいるのだと嬉しそうに話してくれる。

 佐恵子は今日、奥の茶室の畳を新しくしたいと言った。予算的に厳しいのではないかと答えたが、彼女は今度安い材料を探してみると前向きだった。

 実際には茶室など存在しないのだが、佐恵子が夢を持って生活できているなら、それで良いのではないか。現実と向き合って絶望するよりも、希望を抱いて前向きに生きる方がずっと健全だ。

 外の世界は厳しく冷たいが、この家の中は温かく安全だ。私たちには、この家があれば十分なのだ。

◇2024年5月20日

 翔太から嬉しい提案があった。友達を家に呼びたい、みんなに僕たちの秘密の部屋を見せてあげたいのだと、目を輝かせて言ってきた。

 それは良い考えだと答えたが、佐恵子が困ったような表情を見せた。まだ家の中が完全に整っていないから、もう少し待ってもらえないかと翔太に頼んでいる。もう引っ越してから二ヶ月以上経つのに、と翔太は不満そうだ。

 佐恵子は優しく、でもお客様をお迎えするにはまだ準備が足りない、茶室の整備も終わっていないし、新しいお部屋の掃除も途中なのだと説明した。翔太は少し悲しそうだったが、分かったと言って自分の部屋に戻っていった。

 確かに佐恵子の言う通り、お客様をお迎えするには準備が必要かもしれない。しかし、それ以上に気になるのは、最近の佐恵子の外出への消極的な姿勢だ。

 買い物も週に一度程度になり、それもネット通販で済ませることが多い。外に出るより家にいる方が落ち着くと言っているが、少し心配になる。

 私自身も、最近は休日に外出する気力がない。家でゆっくり過ごす方が疲れが取れるし、お金もかからない。家族と一緒に家の中で過ごす時間こそが、最も価値のあるひとときなのだ。

 綾香は、お友達が来たら秘密のお部屋でお茶会がしたいと楽しそうに話している。子供たちの社交性を育てることは大切だが、今は家族だけで過ごす時間を大切にしたい。

 夕食後、家族四人でリビングに座り、今後の家の使い方について相談した。もう少し時間をかけて、本当に素敵な家にしてからお客様をお迎えしましょう、という佐恵子の提案に私も同感した。急いで人を招く必要はない。この家で家族が幸せに過ごせることが何より重要なのだから。今は家族の時間を大切にしたい。