再び、彼は一人で、部隊の長い廊下を歩いていた。

所々に番号の書かれた部屋が並ぶこの廊下の先に、冬馬が所属する第捌部隊(だいはちぶたい)の隊長、葉飛 澪(はとび みお)の個室がある。

第捌部隊で唯一、葉飛澪だけが冬馬を気にかけていた。
一人で任務に行くときは付き添い、異能力を上手く扱えないときには助言をしてくれる。
彼女のその行動が、幾度も挫けかけた冬馬の心を救ってきたことは確かだった。

廊下の先の、「捌」と書かれた扉の前で、彼は立ち止まる。
冬馬以外誰もいない廊下は、いつもと変わらない静寂に包まれていた。

深呼吸をし、扉を開く。


隊長に会うことを予想していた彼の目に映ったのは、静寂に包まれた空間と、部屋の中央に立つ三人の少年少女だった―――。


『冬馬、ようこそ』


部屋の白机に置かれた端末から、葉飛の声が響く。


『これから君には、この子たちと特殊な任務を遂行してもらう』

冬馬は唇を噛みしめた。
また、あの面倒な人間関係が始まるのか。


「私たち、星闇さんの話は聞いているんです」


一人の少女が、冷たい目で彼を見つめる。


「貴方の霊への情けや、無気力な行動は、部隊の邪魔になるだけです。
戦いましょう、私達の存在意義を懸けて」


新たな対立が、今、始まろうとしていた―――。