以上の四つの実験から、「クシコス・ポスト」を講義中に流したら授業評価が変わるのかを調査した結果、以下のことが考えられる。

 ・「クシコス・ポスト」を講義の終了直前に流した場合、授業評価が上がる傾向にある。
 ・「クシコス・ポスト」を講義の開始直後に流した場合、授業評価にあまり変化は見られない。
 ・「クシコス・ポスト」をレジュメ発表終了後に流した場合、授業評価が比較的上がる傾向にある。
 ・「クシコス・ポスト」をレジュメ発表中に流した場合、授業評価が下がる傾向にある。

 筆者ははじめに、「4、どちらかといえば満足している」、「5、満足している」が「3、ふつう」よりも多くなると予想していた。

 運動会で流れる曲として耳なじみのある「クシコス・ポスト」は、その知名度と明るい曲調で、人を笑顔にし楽しませる音楽の一つである。学生の中には、「小学生の頃を思い出して楽しかった」といった感想も見られた。

 ところが「クシコス・ポスト」を流すタイミングによっては、評価に悪影響をもたらす可能性が高いことがわかる。授業評価を下げた理由の多くが、「真剣に講義を受けている中で、不適切である」といった感想であった。

 再生した曲が「クシコス・ポスト」以外の娯楽性の高い音楽であっても、発表中や発言中に流れた場合、「講義中に不適切である」と受け止められるのだろう。

 一方で、「クシコス・ポスト」が人を楽しませ元気づける音楽であることもまた確かだろう。講義終了直前で流した場合、二十四名中二十名が授業評価を上げたと回答している。感想も「面白かった」「楽しい」など、好意的なものが多かった。

 講義中に「クシコス・ポスト」を流した場合、授業評価が上がる仮説は、曲を流すタイミングによって否定される部分もあった。しかし、「クシコス・ポスト」を流すタイミングを講義中の合間や終了直前に限れば、評価を上げられる可能性があることがわかった。