本大学では、授業の終わりに毎回「授業評価・感想票」を書くことになっている。学生はその紙に授業に対する五段階評価と、感想や質問などを自由に記入するが、周りの友人たちに聞くと、「五段階評価」ではたいてい「3」を選ぶそうだ。

 五段階評価では、「あなたは今回の授業に満足しましたか?」という設問に対し、「1、満足していない」、「2、あまり満足していない」、「3、ふつう」、「4、どちらかといえば満足している」、「5、満足している」から一つ選択することになっている。

 ここで「3、ふつう」を選ぶ学生が多いのは、実に日本人らしいと思われる。はっきりと、五段階評価欄で「1、満足していない」を選び、感想欄に「眠くてつまらなかった」などとは、たとえ本心でも素直に記入できない人が多数派だろう。

 しかし、担当する先生としても、また学生としても、「5、満足している」、「面白かった」といった評価が多いほうが、双方のモチベーションにつながることは間違いないと考えられる。
 
 では、多くの人々が聞いたことがある可能性の高い有名な曲を、講義中に突然流したら、授業評価はどのように変わるのだろうか。

 音楽を聴くことには、自律神経を整える効果や、ドーパミンやセロトニンといったホルモンを活性化させるという研究もある。通常音楽を聴かない講義の中で、音楽を流すことによって、学生たちの授業に対する印象が変化するのではないだろうか。
 
 ●流す曲
  ヘルマン・ネッケ作曲 「クシコス・ポスト」

 ●流す講義
  「基礎演習ゼミ(04)」(担当教員 ■■■ ■■) 受講人数 二十四名
  「文学ゼミ Ⅰ(02)」(担当教員 ■ ■■) 受講人数 十八名
  「日本文学演習(10)」(担当教員 ■ ■■) 受講人数 二十二名
  「欧米文学演習(07)」(担当教員 ■■ ■■) 受講人数 二十五名
 
 今回「クシコス・ポスト」を選曲した理由は、知名度、曲調の明るさ、運動会を想起させる娯楽性の高さである。この曲を聞いたことのない学生でも、曲調によって明るさや楽しさ、幸福感を得られることで、授業評価を上げる効果が考えられる。
 
 正規の「授業評価・感想票」を学生は閲覧することができないため、授業評価が上がったかを調査するために、オリジナルで制作した「授業評価・感想票(クシコス・ポストver.)」を毎回講義の最後に配布し、回収する。

「クシコス・ポスト」を流す講義は、事前に相談し許可を得た講義であり、担当教員は曲が流れることは知っていた。しかし、いつ流れるかまでは知らない状態だった。また、すべて少人数制の講義に限っている。

 予想では、「4、どちらかといえば満足している」、「5、満足している」が「3 ふつう」よりも多くなると考えている。では、各授業の「授業評価・感想票(クシコス・ポストver.)」を見ていくことにする。