波嚙み

 私にはわかっていた。
 弘樹くんには好きな人がいることを。
 サークルの後輩とよく遊びに行ってるよね。その子のお家に行って、髪の毛を乾かしてあげたり、同じベッドで一緒に寝たり。私は知っていた。
 彼の『真赤』という曲を聴いた私は、彼への申し訳なさに襲われた。私にもどうすればよいのかわからなかったのだ。彼のことが本当に好きだったのか。だが、彼と離れてからようやく気づいた。私は弘樹くんのことが好きだ。弘樹くんの恋人になりたい。
 深夜にテレビをつけると、あの番組が放送されていた。
 呪いなんてあるわけない、そう思っていた。