外は店に入った時よりも夜が深くなっていて、気温も下がっていた。国道沿い以外は車通りはほぼ無くて、街灯はあるものの足元は暗くて頼りない。それでも、その頼りなさの中に落ちる2つの影が、心強い。

 「私、社会人になってから家族以外の人とこんな風に外食したの、初めてだったんです」

 夜風に吹かれて前髪が割れて額があらわになっている伊都さんが、足元の陰に視線を落として言った。

 「だから、今日ちょっと緊張してました。匡さんと会って3ヶ月くらい経ったけど、私の中で、私が今まで暮らしてたアパートに匡さんがいることがもう当たり前になってて……もしかしたら、今日何か言われるのかもって思ってました」

 「何かって?」

聞き返すと、伊都さんはこの冷たく張り詰めた空気をすっと吸い込む。

 「部屋を、出て行くとか……」

 僕は思わず「えっ」と声を上げた。それに驚いた伊都さんも、えっと僕の顔を見る。

 「あ、驚かせて、ごめん。それは……ちゃんと話さないとと思ってたんだ」

 話に集中できるように足を止める。一歩先のところで、伊都さんも足を止めてこちらに向き合った。僕と伊都さんの間には、切れかかった街灯のぼんやりと明かりが落ちている。

 「僕は――」

 「あっ、あの、まず私から話してもいいですか」

 「え、うん」

 伊都さんはさっきよりもゆっくりと、息を整えるみたいに呼吸する。光量が少ない灯り照らされただけの伊都さんの顔は、僕の目にはぼんやりとしか映らない。