クロとシロと、時々ギン

「私は……」

 口に出してもいいか、一瞬躊躇したが、すぐに心を決める。ここで言わなければ後悔する時が来るかもしれない。

「私はまだまだシロ先輩と一緒に仕事がしたいです。シロ先輩のそばで仕事がしたいです。私が頼んでも、シロ先輩の気持ちは変わりませんか?」

 私は、素直な気持ちを吐露した。シロ先輩は、私の言葉を聞くと嬉しそうな笑みを見せる。それから、ゆっくりとした口調で言う。

「お前になら俺の仕事を預けられる。お前は、俺の自慢の後輩だから」

 その言葉を聞いて、私は、また泣いてしまいそうになったが、ぐっと堪える。シロ先輩が、私のことを信頼してくれていることはよく分かっていたつもりだった。それでも、いざ面と向かって言われると、胸にじんわりと温かい気持ちが広がるのを感じる。

 シロ先輩の決意は固いようだ。それなら、私のやるべきことは決まっている。私は、一度目を瞑り、深呼吸をして、それから目を開く。そして、真っ直ぐにシロ先輩を見つめ返した。

「分かりました。シロ先輩のこと応援します」

 シロ先輩が、仕事を私に託し、会社を辞めるという決断をしたのならば、私は、それに見合う人間になろう。それが、シロ先輩に対する一番の恩返しだと思うから。

 私は、シロ先輩のためにも、これからもっと成長しなければならない。そう決意した。

 私の表情が引き締まったことに気がついたのか、シロ先輩は、満足そうに微笑む。それから、私の頭をポンポンとして、そのまま私の頭に手を置いた。

 シロ先輩の手の感触は、いつだってとても心地良い。幸せの重さを感じながら私は、シロ先輩の顔を見る。聞かなければいけないことがまだ残っている。意を決して口を開いた。

「シロ先輩が転職を考えていることはわかりました。それで、その……わ、私たちのこれからについて……ですが」

 自分でもわかるほどに動揺している。心臓がバクバクと音を立てている。シロ先輩は、そんな私を見て苦笑いを浮かべた。それから、少し照れたように言う。

「さっきも言っただろ。俺は、お前と一緒にいたいって」

 その言葉で、私の心臓はさらに激しく脈打った。私は息をするのを忘れるほどにシロ先輩の顔に見入ってしまう。シロ先輩は、そんな私に真剣な眼差しを向け続けている。まるで私の心の中を見透かすような鋭い視線にドキッとする。

 シロ先輩は、真剣さを残したままそれでも幾分リラックスした表情をしている。この場は完全にシロ先輩のペースだ。