クロとシロと、時々ギン

 白谷吟のタキシード姿が、あまりに素敵すぎて、思わず見惚れてしまう。その姿は、まさに王子様そのもの。周りからも、ほぅっとため息のような声が漏れ聞こえてくる。

 そんな中、白谷吟は私に右手を差し出してきた。

「とても素敵で見惚れてしまったよ。今日はよろしくね。矢城さん」

 白谷吟は、甘い声で囁きかけてきた。私はその手に自分の左手を重ねる。

「こちらこそ、よろしくお願いします。周りは、白谷先輩にメロメロみたいですよ」

 私がそう返すと、白谷先輩は困ったように笑みを浮かべた。それから気を取り直したように表情を引き締めると、傍に佇んでいた三嶋さんに軽く頷き合図を送る。

 介添として私についていた三嶋さんの手が離れ、私は、白谷吟にエスコートされて、バージンロードを歩き出す。一歩歩くたびに、コツコツとヒールが音を立てる。

 私は、改めて祭壇を見上げる。その先にあるステンドグラスから差し込む光が、床に色とりどりの模様を描いている。綺麗だなと見惚れていると、クスリと漏れた笑いが聞こえた。

 何事かと思って白谷吟を見れば、彼は意味ありげに壁際へ目配せをする。なんだろうと思いつつ、白谷吟の視線を追うと、そこには、呆然とこちらを見ているシロ先輩がいた。その顔には驚きの色が浮かんでいる。

 私は、思わず吹き出しそうになるのをなんとか堪える。そして、シロ先輩の方を見ないようにしながら、前を向いて、歩を進めることだけに集中する。

「あれは、君に見惚れているね」

 不意に耳元でささやかれ、私はびくりとする。横を向けば、悪戯っぽく笑う白谷吟の顔があった。私は動揺を隠すために、わざと怒ったような口調で言う。

「もう。今は真面目な場面ですよ」

 しかし、白谷吟は、悪びれることもなく言う。

「史郎が見惚れるのも仕方がないよね。今日の矢城さんは、本当に綺麗だから」

 そう言われると、恥ずかしくなる。きっと、今の私は真っ赤な顔をしていることだろう。私はそれ以上白谷吟の言葉を聞き流すことにした。

 やがて、私たちは、神父の前へとたどり着く。そこで、私は白谷吟の手から離れる。彼と向き合うと、いよいよ始まるのだなと気を引き締めた。

――汝、健やかなるときも、病める時も、喜びの時も、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?

 神父からの問いかけに、私は静かに息を呑む。

――はい。誓います。