クロとシロと、時々ギン

 私は、首を傾げる。

 シロ先輩は小さく咳払いをして、再び口を開いた。

「ほら、まぁ、吟は幼馴染だし、俺たちのことをいつかは言おうと思ってたんだけど」

 シロ先輩は、私の反応を気にするように様子を伺っている。私は、そんなシロ先輩を見つめながら、彼の言わんとすることを理解して顔が熱くなるのを感じた。つまり、先程シロ先輩は、私との関係を白谷吟に打ち明けようとしていたということなのだろう。

「でもなんか、あいつ知ってたんだよな」

 シロ先輩は、困ったような表情を浮かべている。私は、シロ先輩の様子がおかしかった理由が分かって、ホッとした。それから、小さく手を挙げた。

「あの……ごめんなさい。実は、白谷先輩には、私が」

 私がそう告げると、シロ先輩は驚いた顔をした。私は、シロ先輩の目を真っ直ぐに見ながら、頭を下げる。シロ先輩は、少しの間呆然としていたが、やがて、プッと吹き出した。私は、思わず顔を上げる。シロ先輩は、堪えきれないといった風に笑っていた。

 シロ先輩は、ひとしきり笑うと、目に滲んだ涙を拭いながら言った。

「そっか。いや、いいんだ。お前、そう言うの嫌がるかなと思ったんだけど、でも、吟にだけはと思ってさ」

 私は、ポカンとしたままシロ先輩を見る。シロ先輩は、まだ少し可笑しそうな顔をして私を見ていた。シロ先輩が、腕を伸ばして私の頭をポンポンと叩く。私は、やっと状況を理解して、顔が赤くなった。

 シロ先輩は、私があまり周囲からそういった目で見られたくないだろうと考えてくれているようだ。まさにその通りだ。恋愛をすると、浮かれて周囲に言って回る人がいるが、私はあまり言いたくないし、浮かれた素ぶりを見せたくない。

 この人は、一体どこまで私のことを理解してくれているのだろう。そう思うと、私は、恥ずかしくて下を向いてしまう。

 シロ先輩が、そんな私の様子を面白そうに眺めていることが伝わってくる。シロ先輩は、クスリと笑って言った。

「だけど意外だな。クロが自分から吟に言うなんて」
「それは……」

 私は、俯いたままモゴモゴと言い淀む。すると、シロ先輩は私の頭を撫でるようにしながら言った。

「昨日、会いたいって連絡くれたよな? 俺がダメだったから、吟に会ったのか?」

 シロ先輩の優しい声音にドキドキする。シロ先輩の手は大きくて温かくて心地よい。私は、シロ先輩に頭を預けるようにコクリと小さく頷く。シロ先輩の手はまるで魔法のように、私を安心させる。