9時半。玄関の前。
「いろいろ巻き込んでしまってすみませんでした。」
目撃者の一人となった佑月くんにも事情聴取は及び、結局、1時間くらい拘束してしまった。佑月くんの1時間……とんでもない価値がありそうで、その時間を奪ってしまったことが本当に申し訳ない。
「本当に、ありがとうございました。」
佑月くんに、2度も、命を助けてもらってしまった。
「いや、俺がしたくてしたことだから、凛ちゃんが謝る必要はないよ。」
「すみません……。もう迷惑おかけしませんので、では……。」
ぺこり、頭を下げてドアを開ける。
「俺は、」
声がして、部屋に入るのを止める。
「一度も迷惑だなんて思ったことないよ。」
え。振り返って佑月くんを見る。
「人としては合格でも、アイドルとしては失格だな。」
佑月くんが俯いて呟く。何かを諦めたような、失ったような切ない顔。その横顔があまりにも儚くて目が離せなかった。
「そんなことない。」
佑月くんのその顔が、不謹慎にも、美しいと思ってしまった。
「そんなことないです。」
