マンションのエントランスが開いて、すらっとした男の人が入ってきた。コツコツ、と高そうなブーツの音を響かせ、車の鍵をぐるぐる回しながら近づいてくる。
「人使い荒すぎるんですけど〜、どこまでお送りすればよろしいのかな〜?」
その人が、顔を認識できるくらいの距離になった。私はまたギョ!っとして、耳の裏がピキンってなる。
私と目が合って亮ちゃんが一気に怪訝な顔になって立ち止まる。「誰……?」
佑月くんにもたれかかりながら、「なんなんだこの状況は……」と、思わず声が漏れる。
「いや、俺の台詞ね!?」
亮ちゃんの声がマンションのエントランスに響く。
なんだこの状況は。また熱が上がりそう……。額を押さえる。
