「読んだの?これ?全部」
「いや、全部じゃないっすけど。あ、勝手に見てすみません。でも、佑月さんがジメジメメソメソしてるだろうと思ったから……。」
「メソメソはしてねえよ。」
「そうでしたね。これとかこれとか、あとこれも。」
巧が、ホイホイと俺の手にファンレターを乗せていく。


「巧、」吸ってたタバコを灰皿で押し潰す。「迷惑かけてごめん。」
「何言ってんすか。」巧が笑う。「そういうもんでしょ。今度は俺の番っすよ。」巧がなんてことのないように言ってのける。それから、俺の隣に座り、目線を合わせて、真っ直ぐに言う。
「俺は、佑月さんの味方です。」
巧が、これも忘れちゃったかなあ、って呟く。
「……いや、覚えてる。」
巧が俺の言葉に、その口角を柔らかく上げる。「よかった。」