「じゃあ、叔父さまにその本を買ってもらうこともできないの」
「不必要に媚びるのはごめんだ」
「済まん」
「きみは少しものを考えてからしゃべった方が良い」
完全に彼を怒らせた。彼は不機嫌をかくしもせず、どんどんページをめくって行く。
青い空が色を濃くする。ひんやりとしていた空気の温度がだんだんと上がりはじめ、ぬれた緑がかわき、湿ったにおいも晴れて行く。
台風の後の空と言うものはどうしてこうも青いのか。サファイア、アズライト、アクアマリン。
これでは海と区別がつかない。
「僕は、この学校にいる時だけ僕でいられる気がする」
僕の鼓膜を小さくふるわせた独り言に、僕は胸の真ん中をナイフでひと突きされたような衝撃をおぼえた。
彼はとても悲しそうな顔をして王子の進撃を見守る。敵国の兵は倍。優秀な指揮官がいるとは言え、その旗揚げは無謀とも思えた。
刺しちがえるつもりか。
彼の叔父は、彼がお屋敷の敷地の外へ出ることをとてもきらう。
禁じれば禁じるほど彼が外へ出たくなることを、きっとそのひとはしらないのだろう。
「なら、
僕だけが本当のきみをしっていることになる」



