2025-10-18
『それがどうしたってんだ』

好きな人に好きな人がいてもさ
諦めなくていいと思うんだよね。

酔っぱらった君はたまに
名言みたいなことを言う。

「でも叶わない恋なんだよ？」と訊くと
「それがどうしたってんだ」と大笑いし
「諦める理由ではないでしょ」と言った。

叶わないから諦めようとしている私にとって
ズサズサと君の言葉が胸に刺さってきて痛い。

「そんな風に思えて羨ましいよ」と私。
「逆に諦めて幸せになれるの？」と君。

一度、抱いた好意を相手に伝えることなく
そのまま諦めてしまっていては後悔が残る。

目の前に座っている友達は幼馴染で
ずっと一緒に遊んでくれる仲だった。

私は恋愛に奥手で何もできていないというのに
友達は素直に物事を言える性格をしているから。

友達が経験してきた恋愛の話をこれまでにも
幾度となく聞いてきたから素直になることが
どれほど大切なことか理解しているけれども。

人は人、自分は自分と考えていて
何も行動に移せていなかったから。

私に対して見かねた友達が
冒頭の言葉を放ったのだと。

「諦めたら時間に余裕はできるよ」と反抗してみた。
が「暇な時間は後悔を思い出すだけだよ」と言われ。

何も言えなくて俯いてしまう。

「抱いた思いなんだから、大切にしないと」と君。
「そうだね、自分の思いを大切にしないと」と私。

居酒屋を出て、お互い終電で帰った。
さっきまで横にいてくれたおかげか。

１人になってようやく寒い時期だと気付く。
私は君のことを好きでいてよかったと思う。

ただ、どうしても言えそうにない。
この関係に終止符を打たれそうで。

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