昨日のこと、誰かに話すべきだろうか。コウヤは、ピロティで見た4人組のことを誰にも言えずにいた。あれは夢だったのか。幻だったのか。けれど、彼女たちの言葉は、確かに耳に残っていた。
「個性や」「自由で」「はみ出していく」
夕食を食べ終えて自分の部屋に戻ったコウヤは机の上にガンダムのプラモデルを並べた。MG、HG、RG。シリーズもスケールもバラバラ。けれど、どれも彼の“好き”が詰まっていた。それが僕の個性なのか、そう自問する。秋が近づく涼しさを感じたその夜は、やけに長かった。
翌日、教室での昼休み。隣の席の男子・ケンスケが、ふと呟いた。
「昨日のオルフェンズ、また派生機出たな…」
コウヤは、思わず顔を上げた。ケンスケの机には、「機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズ」のステッカーが貼られていた。
「…見た。バルバトスの第5形態の地上用、美しかった」
そのコウヤの一言で、空気が変わった。ケンスケの目が輝き、後ろの席のアキラも話に加わった。
「分かる!宇宙で使用していたシュヴァルベ・グレイズの腰部ブースター、あれで機動力は上がったけど、美しくはなかったしね!」
気づけば、昼休みが“ガンダム会議”になっていた。
コウヤは驚いた。自分の“好き”が、誰かと繋がるなんて。それは、今までの彼にはなかった感覚だった。
放課後。ピロティの前を通ると、フェンスの向こうに誰かが立っていた。女子生徒。セーラー服。髪を結んでいる。多分、同じクラスだ。彼女は、フェンス越しにコウヤを見て言った。
「…あなた、ガンダム好きなんでしょ?」
コウヤは、言葉を失った。彼女は続けた。
「私も好き。でも、女子だから言いづらくて。誰にも言ったことなかった。でも、昨日の昼休み、あなたたちの話…聞こえてた」
彼女の名前はユキ。静かで、目立たなくて、けれど瞳が強かった。
その日、コウヤは初めて“個性”を肯定されたような気がした。ピロティのまだ撤去されていないフェンスの向こうに、おぼろげに組体操をしているあの4人組が見えた気がした。
「個性や」「自由で」「はみ出していく」
夕食を食べ終えて自分の部屋に戻ったコウヤは机の上にガンダムのプラモデルを並べた。MG、HG、RG。シリーズもスケールもバラバラ。けれど、どれも彼の“好き”が詰まっていた。それが僕の個性なのか、そう自問する。秋が近づく涼しさを感じたその夜は、やけに長かった。
翌日、教室での昼休み。隣の席の男子・ケンスケが、ふと呟いた。
「昨日のオルフェンズ、また派生機出たな…」
コウヤは、思わず顔を上げた。ケンスケの机には、「機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズ」のステッカーが貼られていた。
「…見た。バルバトスの第5形態の地上用、美しかった」
そのコウヤの一言で、空気が変わった。ケンスケの目が輝き、後ろの席のアキラも話に加わった。
「分かる!宇宙で使用していたシュヴァルベ・グレイズの腰部ブースター、あれで機動力は上がったけど、美しくはなかったしね!」
気づけば、昼休みが“ガンダム会議”になっていた。
コウヤは驚いた。自分の“好き”が、誰かと繋がるなんて。それは、今までの彼にはなかった感覚だった。
放課後。ピロティの前を通ると、フェンスの向こうに誰かが立っていた。女子生徒。セーラー服。髪を結んでいる。多分、同じクラスだ。彼女は、フェンス越しにコウヤを見て言った。
「…あなた、ガンダム好きなんでしょ?」
コウヤは、言葉を失った。彼女は続けた。
「私も好き。でも、女子だから言いづらくて。誰にも言ったことなかった。でも、昨日の昼休み、あなたたちの話…聞こえてた」
彼女の名前はユキ。静かで、目立たなくて、けれど瞳が強かった。
その日、コウヤは初めて“個性”を肯定されたような気がした。ピロティのまだ撤去されていないフェンスの向こうに、おぼろげに組体操をしているあの4人組が見えた気がした。


