しだいに夏はその盛りに近づいていった。
身体中の肌がしだいに熱を帯びていくのは、季節だけのせいではないことを僕は十分すぎるほどにわかっていた。
一方で、期末試験の終わった教室は騒がしく、夏休みの話題で持ち切りだった。
休みとはいえ部活動があるので、休暇期間中も平日は、日中のほとんどが校舎を開放している。
あす未は休みに入っても変わらず、ブラスバンド部のいない日時を縫うようにして学校に現れ、あの部屋でピアノを鳴らすのだろうか。
それなら、僕も本を読みながら、あるいはノートに詩文やその構想を綴りながら、やはりあの中庭で彼女の音を待ちわびることだろう。
でも、この夏のうちにこれまで以上に彼女に近づくためには、僕はどうするとよいのだろうか。
それはまず、彼女の求めに応じて、自分の書いた言葉を読み聞かせることだと思っている。
直接好意を伝えるのをためらうなら、自分のことを、自分の内面にある別次元の世界を知ってもらうこと。それでさらに彼女との心の距離を徐々に狭めていくのが一番穏当なやり方だと、僕なりに考えた。
これから数十日ある時間の中で、僕は彼女とどうなれるのか、何の自信もないが、そのことへの関心だけが胸を占めていた。
きっかけはほんの些細なひと言だったのに、あす未の細い目とまっすぐの眉、黒い髪、形のよい唇、細い指先、ひ弱そうな肩の線、落ち着いた低めの声、そして甘く漂う匂いが、僕の頭を、そして胸を寝ても覚めてもよぎり続けた。
そして彼女以外は、もう何もいらない気がしていた。
身体中の肌がしだいに熱を帯びていくのは、季節だけのせいではないことを僕は十分すぎるほどにわかっていた。
一方で、期末試験の終わった教室は騒がしく、夏休みの話題で持ち切りだった。
休みとはいえ部活動があるので、休暇期間中も平日は、日中のほとんどが校舎を開放している。
あす未は休みに入っても変わらず、ブラスバンド部のいない日時を縫うようにして学校に現れ、あの部屋でピアノを鳴らすのだろうか。
それなら、僕も本を読みながら、あるいはノートに詩文やその構想を綴りながら、やはりあの中庭で彼女の音を待ちわびることだろう。
でも、この夏のうちにこれまで以上に彼女に近づくためには、僕はどうするとよいのだろうか。
それはまず、彼女の求めに応じて、自分の書いた言葉を読み聞かせることだと思っている。
直接好意を伝えるのをためらうなら、自分のことを、自分の内面にある別次元の世界を知ってもらうこと。それでさらに彼女との心の距離を徐々に狭めていくのが一番穏当なやり方だと、僕なりに考えた。
これから数十日ある時間の中で、僕は彼女とどうなれるのか、何の自信もないが、そのことへの関心だけが胸を占めていた。
きっかけはほんの些細なひと言だったのに、あす未の細い目とまっすぐの眉、黒い髪、形のよい唇、細い指先、ひ弱そうな肩の線、落ち着いた低めの声、そして甘く漂う匂いが、僕の頭を、そして胸を寝ても覚めてもよぎり続けた。
そして彼女以外は、もう何もいらない気がしていた。



