約束を果たしたい気持ちがあることだけはまず伝えておきたいと思って、僕は「ち、ち、ちょっと待って……」と言って、そのページを探しているふりをすると、ノートを前後に派手にめくった。
その指先も汗で濡れて、無駄にページが引っかかる。
そんな様子を眺めている彼女の視線をひりひりと感じた。
が、チャンスの神様は、せっかちであることが相場だった。
うろたえているうちに、扉がノックされた。
羽鳥先生が職員室から戻ってきたかと思ったら、こう告げた。
「宮嶋さん、高良先生とご両親の面談、終わったみたい。帰り支度してね」
すると、あす未は僕から目を外して「はーい」と間延びした返事をすると、あっさりとあきらめ、ピアノ周りに置かれた荷物を手早く片付け始めた。
脇をすり抜けていく彼女のあとを、まるで当たり前のように僕は追った。
どこかぎこちないその歩き方を見て彼女の病のことを思い出し、とりあえず僕はここで別れるよりも、その肩掛け鞄を階下まで持って見送ることにしたのである。
一階に降り立つと、既に高良先生が彼女の両親らしき二人の大人と職員用の玄関に立っていた。あす未を待って外に出ようとしていたところのようだった。
彼女が先生と軽く立ち話しているのを見て、僕はさらに外に出るべく自分の靴のある昇降口に向かって急いだ。
そこから、また彼女たちが駐車場へ出てくるところへ走って回り込むことにしたのだった。
その指先も汗で濡れて、無駄にページが引っかかる。
そんな様子を眺めている彼女の視線をひりひりと感じた。
が、チャンスの神様は、せっかちであることが相場だった。
うろたえているうちに、扉がノックされた。
羽鳥先生が職員室から戻ってきたかと思ったら、こう告げた。
「宮嶋さん、高良先生とご両親の面談、終わったみたい。帰り支度してね」
すると、あす未は僕から目を外して「はーい」と間延びした返事をすると、あっさりとあきらめ、ピアノ周りに置かれた荷物を手早く片付け始めた。
脇をすり抜けていく彼女のあとを、まるで当たり前のように僕は追った。
どこかぎこちないその歩き方を見て彼女の病のことを思い出し、とりあえず僕はここで別れるよりも、その肩掛け鞄を階下まで持って見送ることにしたのである。
一階に降り立つと、既に高良先生が彼女の両親らしき二人の大人と職員用の玄関に立っていた。あす未を待って外に出ようとしていたところのようだった。
彼女が先生と軽く立ち話しているのを見て、僕はさらに外に出るべく自分の靴のある昇降口に向かって急いだ。
そこから、また彼女たちが駐車場へ出てくるところへ走って回り込むことにしたのだった。



