そんな僕の心の波とシンクロするように、教師たちは、もう僕が彼女のことで負った傷が癒されつつあると感じているのか、あるいは傷に触れないで、そっとしておこうとしているのか、たまに廊下で顔を合わせても立ち止まったりはせず、会釈してそのまま無言ですれ違うことが多くなっていった。


 やがて、僕は彼女に直接語りかける言葉よりも、今そして明日、自分はどうあるべきなのか、それを自問する事柄をノートに書きつけることが主になってきた。

 もし、彼女が僕と再び会う日が来たら、どうするのか。
 あるいは。
 もし、彼女が二度と僕の前に現れなかったらどうするのか。
 つまり。
 このままの状況が続いたら、僕は永遠に待てると約束できるのだろうか。

 そんなふうに胸が失望と希望がないまぜになった僕は、彼女が何ごともなかったかのように地元の街に戻ってきた夢を見たこともある。
 が、その名を呼ぶ間もなく彼女が明るい声で隣に立つ、見知らぬ若い男を僕に紹介してきた。
 その男は、無表情で僕を見下ろし、何も言わず彼女の肩を抱き寄せると、踵を返して去っていった。
 その二人の後ろ姿を、僕は涙をにじませ無言で見送っている。
 そんな寂しい夢だった。

 それを予知夢とは思わないようにした。
 彼女にたいする無力感の投影に過ぎないと、僕は努めて淡々と自分に言い聞かせた。

 つまり、単なる夢に過ぎず、それ以上でも以下でもないのだと。