ふとよみがえる彼女が僕に言っていた言葉。

『ユウシの胸から出た言葉なら、

 ユウシの声で聞きたいんだ』

 あの日のは下書きですらなくて、日本語としての体裁が全く整っていなかったが、今なら溢れんばかりの数の言葉を僕はノートに書き溜めている。
 もっとも、やはり明日になれば使えない古びた感性の言葉たちに成り果てるけども。

 そう、言葉もそうである。
 ピアノと同じで、書き続けていないと言葉の感覚が鈍っていく。
 良いフレーズを導くなら、同じ想いばかりを描いていると希薄になり味気なくなり、なかなかしっくりこない作品ばかりになってきても、とにかく日々書き続けることだった。
 
 なら、あす未が再び僕の前に現れるまで、言葉を綴り続けることだろう。
 そして、いよいよ顔を合わせたとき、その日に書いた言葉を読んで聞かせることが彼女のかつての願いに応えることになるにちがいない。

 それが分かると、僕はもう躊躇しなかった。
 ほぼ書き尽くした中、言葉選びに非常に迷いながらも、その日限りの想いを吐露することをやめないでいた。