どのような検査でどのような病が判明しての緊急手術だったのか、まだ何も知らされていない。
家族総出で東京に行ってしまい、この街にあるあす未の家は、以来誰も住んでいないという。
あす未の父親が実は単身赴任で、もともと在京していたともきく。
彼女の口からは家族の話題が出たことがなかったから、そのような話を切れぎれに聞かされても、僕には何の実感もわかなかった。
それでも僕はたまに音楽準備室を訪れていた。
あす未のことで親身である羽鳥先生と会いたくなるのである。
それであるとき、彼女は残念そうにため息をついた。
「宮嶋さんは、今もずっと毎日病室にいるのかな」
「そうじゃないんですか」
僕は話を合わせるつもりでそう返したのだが、彼女の顔色は冴えない。
それは、憔悴しているといってよかった。
「ねえ、いい?」
僕は、その様子に口ごもった。
「ピアノって毎日弾かないと勘が鈍ってしまって、指が動かなくなるの」
「……え?」
「繊細な感覚が必要だから、仮に一日練習をさぼると、感覚を取り戻すのに実は一週間もかかるんだよね」
そのあまりのシビアさに、僕は言葉が継げなかった。
家族総出で東京に行ってしまい、この街にあるあす未の家は、以来誰も住んでいないという。
あす未の父親が実は単身赴任で、もともと在京していたともきく。
彼女の口からは家族の話題が出たことがなかったから、そのような話を切れぎれに聞かされても、僕には何の実感もわかなかった。
それでも僕はたまに音楽準備室を訪れていた。
あす未のことで親身である羽鳥先生と会いたくなるのである。
それであるとき、彼女は残念そうにため息をついた。
「宮嶋さんは、今もずっと毎日病室にいるのかな」
「そうじゃないんですか」
僕は話を合わせるつもりでそう返したのだが、彼女の顔色は冴えない。
それは、憔悴しているといってよかった。
「ねえ、いい?」
僕は、その様子に口ごもった。
「ピアノって毎日弾かないと勘が鈍ってしまって、指が動かなくなるの」
「……え?」
「繊細な感覚が必要だから、仮に一日練習をさぼると、感覚を取り戻すのに実は一週間もかかるんだよね」
そのあまりのシビアさに、僕は言葉が継げなかった。



