いつ再び会えるか分からない。
　もう会えないかもしれない。

　そう彼女をなくしたと感じていたことを思えば、止む得ない理由で僕から去りつつも、彼女の頭や胸の中に僕のことがあって誠実に思われていたことは、希望そのものだったと言っても、けっして過言ではなかった。

　駆け抜けた激しい感情のあまりに、僕はほとんど放心状態で帰路についたが、彼女が病から無事戻ることをまず強く願った。

　もし高良先生が言ったように、彼女が本当に僕にそういう気持ちでいるなら、病を乗り越えたあと、必ず彼女は僕の前に姿を現すだろう。
　そういう確信に近いものが僕には生まれていたのである。

　果たしてどうなったか。
　さらに季節は進むも、高良先生と羽鳥先生に彼女の近況を教えてもらえるよう頼んであったが、あれきり彼女の新しい話は入って来なかった。
　まさか僕に聞かせられない悲劇的な状況となってはいまいと考えたが、大人たちはそうなったらそうなったで、所詮子どもである僕には巧妙に隠しおおせることだろう。
　だから、僕は粛々と自分の信じたいように事の成り行きを眺めるしかないのだと、何度も自分に言い聞かせていた。