僕は、彼女が突然連れ去られるようにして東京へ向かう姿を想像した。
　スマホの連絡先をやり取りしていなかったから、この花火大会の約束を反故にした一連の出来事の説明をする間がなかったのだろう。
　僕は、今一番聞きたいことを振った。
「宮嶋さんは、いつ帰ってくるんですか」

　彼女がこの街に帰ってくる目処がまだ立っていないと先生は言った。
「すんなりと行かないみたいだ。まだ検査があって経過観察している段階らしい」
　それを聞いて僕は肩を落とした。
　こんな時こそ自分が彼女を支えてやるべきなのに、接点が奪われたままである。

　こちらから彼女に会いに東京まで行こうにも、経済的な問題以前に彼女がそれを望んでいるのかどうか分からないうちは積極的に動けない。

　もっとも、彼と話すうちに、個人情報であることを理由に、今彼女がいる病院は家族の意向で学校側にも知らされていない状況であることを知った。
　今度のことも家族があす未の思いを受けて、あえて本人が学校へ現状報告をすることにしたのだという。
　意志の強そうな彼女の口元を思い出した。