帰りの会が終わると担任教師に「それじゃこの後、よろしく」と念を押された。
 僕は荷物をまとめると、後ずさりしたい気持ちを押し殺して職員室に向かった。

 職員室のドアをノックし、失礼しますと声を掛けて開けると、そこにいた教師と目が合う。
 心細くなり思わず小さく「あのー……」と漏らした僕は、担任教師を求めてその目を泳がせた。

 すると、デスクに向かっていたクラス担任を見つけたものの、彼は僕を見ると、顎先を持ち上げて窓際をさした。
 その先にいる羽鳥先生が立ち上がると、柔和な笑みを浮かべた顔の横で小刻みに手を振り、そのまま手招きした。

 そばまで行くと、彼女は横を向き「高良(たから)先生」と別の教師を呼んだ。
 髪の逆立った中年の男性教師がやはり柔らかな物腰でやってくる。
 この先生の授業は受けたことはないが、国語科だったと僕はなんとなく記憶していた。

 が、彼はこう名乗った。
「君が噂の風間君だな。私は、宮嶋さんのクラス担任をしている高良だ」