先生は、それを歌っていても感じているのだと打ち明けた。
「しっくり来ないことの方が多いけど、今日の自分にしか歌えない歌があると思ったら、苦しくても練習を続けるし、そこが本日限りのステージなら思ったとおり歌えなくても、そこに立って歌ってみせたいと思うんだ」
あす未の思いどおりにピアノが弾けたらしいという話をすると、やはり先生は大きく頷いた。「たぶん、どちらかと言えば同じことだよね」
あす未の内面の謎に少し迫れたと僕は感じた。
が、彼女はまたこう言い足した。
「宮嶋さんも何かやり遂げた感覚を得たたまろうけど、満足とはまた別のものだと思う。だから、さらに先に行きたくて、違う自分と出会いたくて、今もまたどこかでピアノを弾きたがっているんだろうな」
僕は、先生のその言葉に、今の彼女を活き活きと思い浮かべたが、反芻するうちにやがて疑いが生まれ、心に曇りが生じた。
親の都合だと聞こえてきてはいるが、まさかその“違う自分”と出会うために、あす未はあす未で僕を捨てたのではないだろうか。
「しっくり来ないことの方が多いけど、今日の自分にしか歌えない歌があると思ったら、苦しくても練習を続けるし、そこが本日限りのステージなら思ったとおり歌えなくても、そこに立って歌ってみせたいと思うんだ」
あす未の思いどおりにピアノが弾けたらしいという話をすると、やはり先生は大きく頷いた。「たぶん、どちらかと言えば同じことだよね」
あす未の内面の謎に少し迫れたと僕は感じた。
が、彼女はまたこう言い足した。
「宮嶋さんも何かやり遂げた感覚を得たたまろうけど、満足とはまた別のものだと思う。だから、さらに先に行きたくて、違う自分と出会いたくて、今もまたどこかでピアノを弾きたがっているんだろうな」
僕は、先生のその言葉に、今の彼女を活き活きと思い浮かべたが、反芻するうちにやがて疑いが生まれ、心に曇りが生じた。
親の都合だと聞こえてきてはいるが、まさかその“違う自分”と出会うために、あす未はあす未で僕を捨てたのではないだろうか。



