僕は、彼女の残酷さを呪うことになるだろうか。
 そう頭をかすめる一方で、少しずつ冷静さを取り戻していく。
 あす未は親の思惑という不可抗力で東京に連れ去られた立場にあって、僕に誠意を示せなかったのが彼女の心残りになっているかもしれないと思い始めた。
 あるいは、そう思うことでただ、僕は自分を慰めようとしているだけだとしたら……?

 彼女の真意を探ろうとするうちに、たちまち涙も忘れてしまった。

 これも書物で読んだが、涙には悲しみを癒す効果があるという。
 つまり、僕はその恩恵には授かれないようである。
 泣いてしまえば楽になるのに、得体の知れない何かがそれを許さないのだった。


 あす未と会えなくなったまま、急速に秋が深まっていった。
 僕は、彼女が自分の中に置き去りにしていったものについて、思いにふけり続けていた。
 彼女が来なくなったのは何でもない普通の日であったため、最後に彼女と会った時を思い返せば、いつのまにか訪れたその別れがやはり、あまりの唐突さゆえに、胸に奥深く刺さっているのだった。