あす未のいつも弾いていた黒のアップライトピアノが、窓際の一角を占めているのが目に入る。
彼女といたことが夢でも幻でもなかったことがわかるほどに、以前とまったく同じようにそこにあった。
教師によると、あす未は今年のゴールデンウィーク明けあたりから、準備室を使わない日時限定という条件つきで許可を得て時々ピアノを弾きにきていたという。
「それで、宮嶋さんね」
教師は腕組みをしながら、さりげなく窓の外を覗き見る。
声変わりしつつある男子生徒らの、途切れがちな奇声がしていた。
「急に東京へ行くことになったの」
僕は目が眩む思いがした。
本当に唐突だからである。
何のあいさつもなしに。しかも週末は自分と二人で会う約束をしていたのに。
何も言えないでいる僕に、教師は目をくれた。
「親御さんの都合みたいだけど、彼女のクラス担任ではないから、先生もそれ以上はよく知らないの」
それでも、彼女が僕から黙って去っていった事実は動かなかった。
彼女といたことが夢でも幻でもなかったことがわかるほどに、以前とまったく同じようにそこにあった。
教師によると、あす未は今年のゴールデンウィーク明けあたりから、準備室を使わない日時限定という条件つきで許可を得て時々ピアノを弾きにきていたという。
「それで、宮嶋さんね」
教師は腕組みをしながら、さりげなく窓の外を覗き見る。
声変わりしつつある男子生徒らの、途切れがちな奇声がしていた。
「急に東京へ行くことになったの」
僕は目が眩む思いがした。
本当に唐突だからである。
何のあいさつもなしに。しかも週末は自分と二人で会う約束をしていたのに。
何も言えないでいる僕に、教師は目をくれた。
「親御さんの都合みたいだけど、彼女のクラス担任ではないから、先生もそれ以上はよく知らないの」
それでも、彼女が僕から黙って去っていった事実は動かなかった。



