が、こんなにひっつくほどそばにいても、一方の彼女はまったく何の気もないようだった。
 彼女が僕のことを好ましく思ってくれているのを感じ取った半面、異性としてまったく意識していないからこその自然な仕草だと思い当たると、僕はすぐに気落ちしてしまった。

 ただの友だちで済まされたくないが、これ以上踏み込んだら彼女は逃げてしまうだろうか。
 一か八か、いつかそれを試す日がやってくるとして、それはどのようなシチュエーションたろうか。僕は想像を巡らせた。

 たとえば今度の花火大会の会場で、互いに暗がりの中にいるとそういう気分になってくるかもしれない。
 それにそこを逃したら、二人で会える場に気安く誘える機会がもう他にはない気がした。

 普段昼間から顔を合わせるここは、ごく日常的な場で、僕が特別な想いを打ち明ける気分、そして彼女がそれを受け入れる気分になり得えないだろう。

 僕は思わず息が詰まる思いがした。