けっして長い曲でもないジムノペディを弾き終えた彼女の華奢な背中は、やはり陰鬱としたものをまとっていた。
そして部屋には余韻が残された。
声を掛けるのが憚られ、僕は録音を止めたきり立ち尽くすほかなかった。
彼女はピアノに掛けた譜面を手にすると、半分だけ振り返り尻目に僕を見た。
それで僕の手にあるスマホが目に入ったのだろう。
「……録ったの?」
頷くと、彼女は表情もなく立ち上がって、音を立てずにそばへやってきた。
それからほんの少し眉を浮かせた。
「どんなふうに録れたか聴かせて」
僕はイヤフォンを彼女に貸した。
細い指先を耳にあてると僕を見たので、再生ボタンをタップした。
彼女はそれから目線を床に走らせる素振りをしたが、すくにもう一度僕を見てボリュームを少し上げるよう言った。
二段階上げて目を見ると、彼女は頷いた。
それからは彼女は目を閉じ、身体を固くしたままだった。
その緊張感が僕にも伝播してくる。
張り詰めた静けさの中、僕は画面に映る再生時間ばかりを気にした。
そして部屋には余韻が残された。
声を掛けるのが憚られ、僕は録音を止めたきり立ち尽くすほかなかった。
彼女はピアノに掛けた譜面を手にすると、半分だけ振り返り尻目に僕を見た。
それで僕の手にあるスマホが目に入ったのだろう。
「……録ったの?」
頷くと、彼女は表情もなく立ち上がって、音を立てずにそばへやってきた。
それからほんの少し眉を浮かせた。
「どんなふうに録れたか聴かせて」
僕はイヤフォンを彼女に貸した。
細い指先を耳にあてると僕を見たので、再生ボタンをタップした。
彼女はそれから目線を床に走らせる素振りをしたが、すくにもう一度僕を見てボリュームを少し上げるよう言った。
二段階上げて目を見ると、彼女は頷いた。
それからは彼女は目を閉じ、身体を固くしたままだった。
その緊張感が僕にも伝播してくる。
張り詰めた静けさの中、僕は画面に映る再生時間ばかりを気にした。



