僕はその夜、何か大事なことを悟った気がしたが、それでも彼女とは常に顔を合わせているのに、僕はしだいに気後れがひどくなっていった。

　いつまでも彼女のそばにいることに慣れない僕は、彼女を意識しすぎていることに気づいていた。が、そんな自分の気持ちをコントロールできるほど、僕もまだできた人間ではなかったということである。

　やがて、地元の花火大会の日が迫ってきた。
　毎年八月の最初の週末にあるその行事に向けて僕は、今年は誘いたい相手がいるので当然胸を高ぶらせていた。

　僕が実際にあす未を花火に誘ったのは、二回目だった。
　つまり、誘おうと心に決めていた一回目は、腰が引けて誘えなかったのだ。
　断られたらという思いが強まって、それから彼女にどう思われて、二人の関係性が変わってしまったらと考え出したら止まらなくなり、どうしょうもなかった。
　それで、話題を花火大会に持っていくこともできずに、僕はただただ、彼女の話にぎこちなく頷いているだけだった。