その日はたしか、雨が降っていたと思う。
 
 僕は毎日、学校へ通っていたが、あす未が必ずしもそこにいるわけではなかった。
 時々いないその日は、僕はがっかりしたけど、せっかくの夏休みだ。彼女だって時々は友だちに誘われて遊びに行くこともあるだろう。
 そのために僕に断りを入れる道理なんてない。
 内心、その日過ごす相手が彼女の恋の対象でなければと強く願っていたが、まだ彼女の何者でもない自分が、彼女を縛りつける必然などこの世のどこにもないことくらい、冷静沈着になれなくても、僕はわかりすぎるくらいわかっていた。

 彼女は、若いこの時期に今しかできない過ごし方をすべきだと思うし、それは僕自身だってそうだった。
 
 それでも僕は、彼女といる時間を少しでも多く持ちたかった。
 それで、今日という日が二度と戻ってこないことに、これほどの焦燥感があったことは、これまでになかったのは確かである。