そのようなこだわりが災いしたのか、僕の書く詩文たちはどれも、数日経っても未完成のままだった。
 言葉の端々が気になって、何度も直しを入れて、なかなか披露できるような形にならなかった。
 他人の書いた文章の良し悪しが味わえるわりに、自分の書くものはお粗末極まりないのが、何よりも僕を落胆させた。

 僕が作品の朗読を先延ばしするせいで、彼女はしだいに僕の作品への関心が薄れていったのか、そうしつこく催促してこなくなった。
 僕は、変わらず彼女にたいして打ち明けずにいられない想いを募らせているだけに、それには非常に複雑な心境となった。
 そういった、聞かせたいような、聞かせたくないような、そういった逡巡が昼夜問わず常に僕の胸にありつづけた。
 もちろん、聞かせまいとする思いの陰には、彼女が僕の想いを受けとめてくれるかどうか、測りきれない不安が強くあった。

 想いを打ち明けることで、そんなつもりじゃなかったと彼女は僕を拒むようになるかもしれない。
 そんなふうに彼女を失うくらいなら、いつか訪れるかもしれない、そうすべきそのタイミングまで密かに想い続ける道を選びたいという気持ちもあるのだった。