これまでに紐解いた書物のいくつかには、夏の恋のはかなさが描かれていた。
僕はそれを既に知った気になりながら、僕らのは特別な愛に昇華していくに違いないといった確信めいたものもあった。
これは、古来よりありふれた悲しい結末の恋に縛られず、奇跡的に出会った僕とあす未なら新しい世界を切り拓いていけるはず。
そういう自信のようなものが、ゆらゆらと揺れる僕の内なるものを裏打ちしているのだった。
あるとき、あまりにも彼女が「詩はできた?」と聞いてくるので、僕は聞き返した。
「簡単にいうなよ。僕はまったく新しい言葉をつくることに追われているけど、君はひたすら既存の曲を何度もなぞっているだけだよね」
「それをいうなら、もしユウシも自分とそっくりの気持ちを描いた文章に出会ったなら、それを私に読み聞かせてくれてもいいんだよ」
あす未は目を少し大きく見開くと、短くした髪を揺らせた。「でも、違うんでしょ?」
僕は悩んだふりをしたけど、つまりはこうだった。
ありふれた表現ではなく、彼女だけにふさわしい言葉を見つけようとする態度は、あす未は他に代わりがきかない、この世でただ一人きりである現実と同じである。
どんなに僕に限りなく似た状況と感情を持ち得た描写であっても、それはあくまでその作者や登場人物の言葉であって、僕のではない。
僕だけが彼女だけに読ませる、もしくは聞かせるものを生み出すということは、僕の彼女にたいする最大級の誠意といってよかった。
僕はそれを既に知った気になりながら、僕らのは特別な愛に昇華していくに違いないといった確信めいたものもあった。
これは、古来よりありふれた悲しい結末の恋に縛られず、奇跡的に出会った僕とあす未なら新しい世界を切り拓いていけるはず。
そういう自信のようなものが、ゆらゆらと揺れる僕の内なるものを裏打ちしているのだった。
あるとき、あまりにも彼女が「詩はできた?」と聞いてくるので、僕は聞き返した。
「簡単にいうなよ。僕はまったく新しい言葉をつくることに追われているけど、君はひたすら既存の曲を何度もなぞっているだけだよね」
「それをいうなら、もしユウシも自分とそっくりの気持ちを描いた文章に出会ったなら、それを私に読み聞かせてくれてもいいんだよ」
あす未は目を少し大きく見開くと、短くした髪を揺らせた。「でも、違うんでしょ?」
僕は悩んだふりをしたけど、つまりはこうだった。
ありふれた表現ではなく、彼女だけにふさわしい言葉を見つけようとする態度は、あす未は他に代わりがきかない、この世でただ一人きりである現実と同じである。
どんなに僕に限りなく似た状況と感情を持ち得た描写であっても、それはあくまでその作者や登場人物の言葉であって、僕のではない。
僕だけが彼女だけに読ませる、もしくは聞かせるものを生み出すということは、僕の彼女にたいする最大級の誠意といってよかった。



