「……そ、そんなの、言えないよ」
「え? どういう意味?」
「まだ下書きとかだし……」
「ええっ?! 私は試しに弾いているのを、ユウシにたくさん聴かせているのに?」
彼女は口先を尖らせたが、その目は笑っていた。
「じゃあさ、その下書きのでもいいよ。私に読んで聞かせて?」
「え? いや、ちょっと、それは……」
「ユウシの胸から出た言葉なら、ユウシの生の声で聞きたいんだ」
あす未はしきりに瞬いた。「つまり、歌のようなものだよね。それは、音の世界に生きている私の感覚なのかもしれないけど」
詩が言葉の意味だけでなく響きも味わうものであるとするなら、彼女のいう意味もわかる。
ただ、やはり今ここで問題なのは、彼女について紡いだ未完成の言葉を本人に披露することに尽きた。
ならば、別のテーマであったなら読んで聞かせることもできただろうか。
僕は内心舌打ちしたが、今、彼女のこと以外に心が揺れたりすることはなかった。
あれほど興味のあったはずの歴史や宇宙のこととかが、この真夏の彼女のまぶしさの下ではかすんで見えなくなっているのだった。
「え? どういう意味?」
「まだ下書きとかだし……」
「ええっ?! 私は試しに弾いているのを、ユウシにたくさん聴かせているのに?」
彼女は口先を尖らせたが、その目は笑っていた。
「じゃあさ、その下書きのでもいいよ。私に読んで聞かせて?」
「え? いや、ちょっと、それは……」
「ユウシの胸から出た言葉なら、ユウシの生の声で聞きたいんだ」
あす未はしきりに瞬いた。「つまり、歌のようなものだよね。それは、音の世界に生きている私の感覚なのかもしれないけど」
詩が言葉の意味だけでなく響きも味わうものであるとするなら、彼女のいう意味もわかる。
ただ、やはり今ここで問題なのは、彼女について紡いだ未完成の言葉を本人に披露することに尽きた。
ならば、別のテーマであったなら読んで聞かせることもできただろうか。
僕は内心舌打ちしたが、今、彼女のこと以外に心が揺れたりすることはなかった。
あれほど興味のあったはずの歴史や宇宙のこととかが、この真夏の彼女のまぶしさの下ではかすんで見えなくなっているのだった。



