あす()との出会いはこうだ。
 
 僕は思わず、四角くかたどられた中学校の中庭の青い空を見上げて、耳を澄ませた。
 どこからともなくピアノの音色が聴こえてくる。

 路面を打つ微かな雨音に似たそれにつられて僕は校舎に戻ると、音のする上の階を目指した。
 近づくにつれ、だんだんと音が増していく。
 四階までの階段を、そろりそろりと一段とばしで登りつめると、一番奥の音楽室に向かった。
 細やかで軽やかだが、一音一音の粒が立っていて、胸にしみていく。
 初めて聴く曲だが、奇をてらうこともない素直なメロディだった。
 
(どんな人が弾いているんだろう)

 僕はそれを確かめたい一心でやって来たが、音は音楽準備室からしているようで、その木製の扉が半開きになっていた。
 音の主に、自分がすぐそばにいることを気取られないために足を忍ばせ、そっとのぞくと、部屋の一番奥で、こちらに背を向け一心にピアノを弾く、白いブラウスがまばゆい女子生徒の後ろ姿が見えた。