「で、今日の放課後でいいよね?」

「心の準備が…」

「必要ないでしょ!私が言ってあげる!」

「でも…」
 
霞が居てくれるなら心強い。でも、自分で話に行きたい気持ちもある。

「永茉、霞には全部話した。」

「え…なんで?」

「言っちゃダメとか言ってないし。」

「そうだけど…。嫌でもないけど…。」
 
本当に嫌だったなら、「言わないで」って言っているはずだ。でも、言っていなかった…。
 
言ったつもりではいたけど、そういえば言ってなかったな。
 
霞に知られた事には何も感じていない。
 
むしろ、安心感がある。
 
ひとりで悩むよりずっといい。
 
恵のおかげだ。

「もうこんな時間!教室戻らなくちゃ!」

「教室戻るか…」

「…うん」
 
恵に「ありがとう」って言いたいのに上手く声が出ない。
 
どうやって言えばいいんだろう…

「永茉、今日の放課後、1組の教室…いや、2組の方でいいや。そこで待ってて。」

「うん。わかった」

放課後になった。
 
永茉は、いつも通り窓の外を見ていた。
 
教室の中に視線を戻し、見渡すと、華鈴がいた。
 
華鈴は居心地悪そうにモジモジしている…と思うと、立ち上がってウロウロしたり…したと思うと鞄をゴソゴソしたりしていた。
 
永茉はまた、窓の方を見ようとした。

「ねぇ…永茉?」

「えっ?」
 
振り向くと華鈴が目の前に立っていた。

「私、霞に呼ばれたんだけど…。永茉はなんでここにいるの?」

「えっと…」
 
霞が華鈴を呼んでくれたことはなんとなく勘づいていた。
 
でも、なんて返せばいいのか。

「華鈴、永茉、おまたせー!」
 
霞が教室に入ってきた。

「え?永茉も呼ばれてたの?」

「…」
 
永茉は、何も言えなかった。

嘘はつきたくないけど…

「違うよ!永茉が私の事呼んでくれたんだよ?」
 
霞は永茉を試すように少し笑いながら言った。

「えっ!ちょと…なんで!」

「どういうこと?」

永茉は、急の出来事に戸惑い大きな声が出てしまった。

華鈴は、頭の上に「?」マークがついている。