にくゑ-断片

■断片6|診療記録・初診
【村立診療所・診察カルテ】
 #にくゑ #創作ホラー #断片連載 #一次創作

 患者:梓(17歳・女性)
 初診日:202X年4月15日
 担当医:吉川直樹

【診察の経緯】
 転入に伴う健康診断として来院。
 患者は礼儀正しく、知的な印象。読書好きとのこと。

【診察所見】
 一般的な所見:特に異常なし
 血圧:106/68 体温:36.4度 脈拍:72

 しかし血液検査で異常値を検出。
 これまでに見たことがない数値だ。

【患者の訴え】
「東京にいた頃はいつも体調悪かったんですけど、この村に来てから嘘みたいに元気になりました」

 移住後の体調改善を報告。
 貧血、頭痛等の症状が完全に消失している。

 普通なら喜ばしいことだが、
 この村では「体調が良くなる」ことを手放しで喜べない。

【血液検査詳細】
 村民全員の血液に含まれる「あの物質」
 梓の血液には、その物質がまったく検出されない。
 代わりに、抗体のようなものが大量に存在している。

 これは何を意味するのか?

 過去にも一例だけ、同様のケースがあったという記録。
 20年以上前。患者名は記録にない。
 その患者はその後どうなったのだろう。

【私的メモ】
 梓は特別な存在かもしれない。
 村の「システム」に組み込まれない稀有な人物。

 だが、それは彼女にとって幸運なのか。
 それとも、別の危険を意味するのか。

 継続的な観察が必要。
 できることなら、彼女を守りたい。

 今度こそ、患者を救いたい。



【カルテの隅に走り書き】
 巫女の血統?
 でも本人は何も知らない様子
 説明すべきか迷っている