にくゑ-断片

■断片35|清音への別れ
【メモ帳より】


 最後に、清音に会いに行った。

 村長の家の前に立ったとき、清音が出てきた。
 まるで私が来るのを知ってたみたいに。

 もう、清音じゃなかった。

 全身から目や口が覗いてて、でも顔はまだ清音だった。
 その顔で、微笑んだ。

「来てくれたのね」
「うん」
「ありがとう。あなたがいてくれて」

 私、泣いてた。
 いつから涙出てたか分からない。

「ごめん」私が言った。「守れなくて」
「いいの。これで、やっと楽になれる」

 清音が手を伸ばした。
 その手は、まだ人間の手だった。

 私も手を伸ばして、握った。
 冷たくて、でも温かかった。

「また、会えるかな」
「きっと。別の形で」

 嘘だと思った。
 でも、そう言うしかなかった。

「あなたは生きて。そして、忘れて」
 清音が最後に言った。
「私たちのことは、忘れて幸せになって」

 でも、忘れられるわけがない。
 清音も、この村も、すべてを覚えてる。

 さよなら、清音。
 私の初恋。
 私の友達。