にくゑ-断片

■断片33|最後の診察記録
【村立診療所・緊急報告書】
 緊急事態報告書
 作成日:202X年――
 作成者:吉川雄一郎(村立診療所医師)

【状況報告】
 村内で原因不明の感染症が急速に拡大
 感染者は外見的に人間の形状を保っているが、以下の症状を呈する:
 ・口腔、腹部、背部から異形の器官が出現
 ・異常な食欲(特に肉類への執着)
 ・集団行動の傾向
 ・理性の段階的な消失

 感染者数:推定村民の95%以上
 非感染者:梓(17歳・女性)のみ確認

【医学的所見】
 これは感染症ではない。
 何らかの寄生生物による宿主の改変と推定される。
 患者梓の血液に含まれる抗体が唯一の対抗手段。

【緊急措置】
 本日午後11時をもって、村の完全封鎖を実行予定。
 感染拡大防止のため、焼却処分を含む根絶措置が必要。
 患者梓と共に村外への避難を試みる。

 これが人類に対する脅威であることは明白。
 しかし、この記録が外部に届く可能性は低い。

 もし誰かがこれを読んでいるなら――
 この村に近づいてはいけない。
 そして、もし同様の事例を見つけたら、
 迷わず燃やせ。

 吉川直樹(印)