にくゑ-断片

■断片29|祭りの夜
【メモ帳より】
 夢なのか、現実なのか、分からない。

 太鼓の音で目が覚めた。
 時計を見たら午後11時。
 外が明るい。松明の明かりだった。

 窓から覗くと、村人たちが広場に集まってる。
 みんな白い着物を着て、顔に何かを塗ってる。

 佐藤さん一家も、輪の中にいた。
 沙織さんは不安そうな顔してるけど、
 俊夫さんと陽太くんは、ぼんやりした表情。

 清音が中央に立ってる。
 でも、それはもう清音の形をした何かだった。

 体じゅうから目と口が覗いてて、
 白い着物の下で、たくさんの腕がうごめいてる。

 にくゑが、清音を完全に支配してる。

 儀式が始まった。
 村人たちが歌を歌い始める。
 でも、それは歌じゃない。
 にくゑの鳴き声だった。

 沙織さんが何かに気づいた。
 顔が青ざめて、陽太くんを抱きしめた。
 でも、もう遅い。

 俊夫さんの体から、触手が伸びてきた。