にくゑ-断片

■断片27|忠告
【メモ帳より】
 沙織さんに直接話した。

 公園で陽太くんを遊ばせてる時、
 私は思い切って声をかけた。

「沙織さん、お祭り、参加するんですか?」
「ええ、皆さんに誘われて」

 沙織さんは優しく微笑んだけど、
 目の奥に不安の色があった。

「やめた方がいいです」
 私ははっきり言った。

「え?」
「危険なんです。この村のお祭りは」

 沙織さんの顔が困惑に歪んだ。
「どういうこと?」

 どう説明すればいいのか分からなかった。
 にくゑのこと? 巫女のこと? 儀式のこと?
 全部話したら、完全に狂人扱いされる。

「とにかく、その日は家から出ないで。
  陽太くんと俊夫さんと一緒に、家に鍵かけて」

 沙織さんは首を振った。
「梓ちゃん、皆さんがそんな危険なことするはずない」

「お願いします」
 私は彼女の手を握った。
「信じて」

 でも沙織さんは優しく手を離した。
「心配してくれてありがとう。でも大丈夫よ」

 そう言って、陽太くんと一緒に帰っていった。

 私の忠告は、届かなかった。
 でも、言わずにはいられなかった。