にくゑ-断片

■断片25|神社の裏板
【メモ帳より】
 #にくゑ #創作ホラー #断片連載 #一次創作

 神社の裏手で、古い板を見つけた。

 山側の茂みで道に迷って、必死に出口を探してたとき、
 急に視界がひらけた。

 そこに三枚の板が立てかけてある。
 釘は錆びて抜けかけで、板は半分倒れてた。
 裏面に、黒いペンで何かが書いてある。

 一枚目。子どもの字で:

「みかちゃんが選ばれた」
「神様の花嫁になるんだって」
「うらやましい、私も選ばれたい」
「清音様はとても美しくて、優しくて」
「きっと神様も喜んでる」

 二枚目。もう少し大きい子の字:

 昭和53年 清音(一代目)記す
 
 いちに、にくゑが 落とし肉
 さんし、静かな 夜の後
 ごろく、喜んで 次の子を
 ななはち、早く迎えて
 きゅうじゅう、待ってる 待ってる

 ※これは村に伝わる神聖な歌です
 ※選ばれた者だけが知ることができる、尊い真実
 ※次の清音に、誇りとともに伝える

 三枚目。きれいな大人の字:

 平成12年 清音(二代目)
 
 私の使命も終わりに近づいています。
 神様とひとつになれる日が楽しみです。

 【過去の供物】
 昭和58年 田中家→神様に喜ばれました
 平成3年 佐々木家→豊作をもたらしました
 平成9年 高橋家→不完全でしたが、神様は慈悲深く受け入れてくださいました

 ──この部分の下に、荒々しい文字で割り込むように書かれていた──
 
 間違ってる!
 これは神聖なことじゃない!
 でも、もう遅い
 誰も止められない
 この子だけは、普通に生きて

 私は震えた。
 
 三代目清音の欄に書かれていた名前——
 
 弓子。
 
 それは、お母さんの名前だった。