にくゑ-断片

■断片24|お囃子が鳴った朝
【メモ帳より】
 #にくゑ #創作ホラー #断片連載 #一次創作

 朝、お囃子が聞こえた。
 太鼓の音と、笛の音。

 遠くからだったけど、たしかにリズムがあって、音が重なってた。
 祭りの日みたいな、ちょっとにぎやかで、でもどこかゆっくりした調子。

 私は、寝ぼけてたわけじゃない。
 時計は七時すぎで、お母さんはもう朝ごはんを作ってたし、
 カーテンのすき間から、ちゃんと朝の光が入ってた。

 でも、その音は、どこにもなかった。

 窓を開けても、人の声も、車の音も、何も聞こえなかった。
 ただ、お囃子の音だけが残っていて、
 耳の奥で、何度もくるくるまわってた。

 学校で聞いてみた。
「今朝、お囃子みたいな音、聞こえなかった?」って。

 でも、みんな首を横にふった。
「そんなの鳴ってないよ」って、当たり前みたいに言われた。

 清音も、「なにも鳴ってなかったと思う」って。
 その時、少しだけ私の顔を見て、すぐ目をそらした。

 ──もうすぐ、この村でお祭りがあるって聞いてる。
 だから、もしかしたら練習だったのかもしれない。

 でも、あの音は──
 なんていうか、練習っていうより、
 誰かを、呼んでるみたいな感じがした。